2024年12月20日金曜日

5-1-1 アドベンチャーツーリズムとしてのサイクルツーリズム

  アドベンチャーツーリズム(以下AT)とは「アクティビティ、自然、文化体験の3要素のうち、2つ以上で構成される旅行」をいう(Adventure Travel Trade Associationによる定義)(図1)。もともとは1980年代に自然を活かしたアウトドア・アクティビティ観光としてニュージーランドで発達した。自然をテーマとした観光にはエコツーリズム、グリーンツーリズムなどがあるが、アドベンチャーツーリズムは、アクティビティや異文化体験が組み込まれ、「学び」より「楽しみ」を重視したレジャー性の高さが特徴である。

 ATは旅行者が地域独自の自然や地域のありのまま文化を、地域の方々とともに体験し、旅行者自身の自己変革・成長の実現を目的とする旅行形態である。“アドベンチャー”という言葉から、強度の高いアクティビティを主目的とすると連想されがちだが、アクティビティは地域をより良く知り、地域の方々との深く接する手段の一つであり、近年はハードなものより、むしろ散策や文化体験等のソフトで簡易なものが主流となってきている。

 ATは、自然や文化といった軸ではエコツーリズムやグリーンツーリズムと共通項を持つものだが、アクティビティを通じて地域の文化と自然を体験することで、自身の成長・変革と地域経済への貢献を実現することを目的とした新しい旅のあり方である。

図1.アドベンチャーツーリズムの概念

出所:ATTA HP・データ、UNWTO 「Global Report on Adventure Tourism」、国土交通省「着地型旅行の市場概要」よりJTB総合研究所作成

 また、AT顧客の消費形態として、1万米ドルの経済効果を生み出すためには、マスツーリズム(クルーズ等)では100人が必要だが、ATでは4人の来訪で達成できるとされている。つまり、ATではより環境等へのインパクトを抑えながら、経済効果を生み出すことができる。さらに、マスツーリズムでは消費額のうち、地域に残るのはわずか14%に留まるのに対し、ATの場合には実に65%が地域に残るという調査結果がでている。加えて雇用創出効果もATの方が、1.7倍大きいことも確認されている。

 サイクリングはアドベンチャーツーリズムにおけるアクティビティの一種であり、近年アドベンチャーツーリズムでは電動自転車によるプログラムが脚光を浴びている。
 緩やかなサイクリングで文化資本も自然資本も楽しめることから、アドベンチャーツーリズムとしてのサイクルツーリズムは大きな可能性を秘めている。

引用参考文献
一般社団法人アドベンチャーツーリズム推進機構公式サイト https://atjapan.org/adventure-tourism

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アドベンチャーツーリズム(トラベル)

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