経験価値を積極的に施策に取り入れている代表的な事例としてはハーレー・ダビッドソンとスターバックスがある。本項ではハーレー・ダビッドソンとスターバックスの事例について解説する。
ハーレー・ダビッドソンは、1980年代に直面した経営危機からの復活劇はブランド・エクイティの再構築とライフスタイルマーケティングを重視し、顧客の「ハーレー体験」(表1)を経営基盤の根幹に位置付けたことによる。ライフスタイルマーケティングに関しては、日本法人のハーレー・ダビッドソン・ジャパン(以下HDJ)の活動がある。HDJは、顧客接点となる販売店教育を基盤としたライフスタイルマーケティングの環境作りにより、顧客の「ハーレー体験」を支えている。
表1 ハーレー体験:ライフサポートプログラム「10の楽しみ」
次にスターバックスの競争戦略は、単に美味しいコーヒーを提供するだけでなく、店舗を家庭、職場に継ぐ「第3の場所」と位置づけ、魅力溢れる豊かな雰囲気を含めた「スターバックス体験」を提供することである。(長沢ら,2005)
また、ハワード シュルツ他[1998]はスターバックス体験について、「スターバックスの製品は単にコーヒーだけに留まらない。スターバックス体験と呼ばれるものも、われわれの製品なのである。それは快適で入りやすく、しかも上品で優雅なスターバックスでしか味わえない魅力溢れる豊かな雰囲気に他ならない。(中略)スターバックスのどの店も顧客が見、触れ、聞き、嗅ぎ、味わうものすべてのものに気を配りながら運営されている。感覚を刺激するあらゆるものが、高い基準を満たしていなければならないのだ。絵や彫刻、音楽、香り、外観、そしてコーヒーの味わい。それぞれを通して、『ここにあるものはすべて最高である』というメッセージを顧客の潜在意識に送り届ける必要がある。」(41)と述べている。
ハーレー・ダビッドソンやスターバックスにおいて、それぞれの企業は単にバイクやコーヒーというプロダクトを販売するということに留まらず、そのプロダクトを購入することを通して顧客が得ることができる経験(体験)をいかに重視して施策を打っているかがわかる。
引用参考文献
長沢伸也編著[2005]『ヒットを生む経験価値創造』日科技連出版社
ハワード シュルツ他[1998]『スターバックス成功物語』日経BP
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