長沢ら(2005)は、マーケティング理論における経験価値の捉えられ方の歴史を以下のように解説している。
1960年代における消費者行動の包括的概念モデルの集大成といわれるハワード=シェス・モデルは、広告、価格などの消費者への刺激とそれに対する店舗や製品ブランドの選択、購買などの顕示的反応、およびその両者を繋ぐ態度、意図といった媒介的反応という3つの側面で捉えようとする「刺激‐生体‐反応(S-O-R)」理論に基づいている。
1970年代に入ると、消費者行動研究は態度形成、態度変容を中心とした研究の段階に移った。新たな分析視点として1970年代後半以降に台頭してきたのが「消費者情報処理」理論といわれるものである。この理論は、消費者の行動が目的の存在を前提としているが、環境の変化に対して常に一方的・受動的に消費者が反応するというわけではなく、一定の自由裁量を持って環境に主体的に働きかけ、自らの目標達成のために能動的問題解決をしようとする、というものである。
1982年 E.C.HirschhmanとM.B.Holbrookは、「Hedonic Consumptiom(快楽的消費)」という概念を提唱し、製品使用という「経験」の「multi-sensory(複合的知覚・感覚)」、「fantasy(想像)」、「emotive aspects(情緒的側面)」と関連した消費者行動がいかに多面的(審美性、無形性、主観性など)であるかを論じた研究を行っている。
また、長沢ら(2005)は「経験」の概念を、先行研究を踏まえ表1のように整理している。
表1 「経験」の概念
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