2024年12月19日木曜日

4-1-7サイクルツーリズムにおける地域資本

本節では国内の主要なサイクリングとして、しまなみ海道サイクリング(広島県・愛媛県)、飛騨古川里山サイクリング(岐阜県)、ビワイチサイクリング(滋賀県) を取り上げ、それぞれの地域資本と経験価値について概説する。

まず、3つのサイクリングについて、概要を説明する。

しまなみ海道サイクリングについてだが、しまなみ海道(西瀬戸自動車道)は、本州四国連絡橋3ルートの中で、唯一自転車歩行者が併設されている自動車道(一般国道317号)で、総延長59.4km。広島県尾道市~愛媛県今治市までの6島を7橋で結ぶ。7橋の内6橋に自転車歩行者道が整備され、各島の周回道路と併せて総延長70kmのサイクリングロードとなっている。2014年7月には自転車通行料の無料化(令和8年3月まで暫定)が実現し、更に多くのサイクリストが訪れている。

次に、飛騨古川里山サイクリングについてだが、飛騨古川にある株式会社美ら地球(ちゅらぼし)が提供している、ガイド付きの里山サイクリングである。同サービスでは、日本人には何気ない景色である里山の風景、日本の原風景をサイクリングを通して外国人に感じてもらうというサービスである。2010年にスタートしてから、5年間で世界40数カ国の外国人がツアーを利用している。2009年に当初はレンタサイクルとしてはじめたが、ビジネスとして成立させるために付加価値を付けるために2010年からガイド付きのサービスを開始した。現在では4種類のサイングリングツアーを催行している。

最後に「ビワイチサイクリング」についてである。「ビワイチ」は、「琵琶湖一周サイクリング」の略である。周囲200kmで湖の周りなので高低差はさほどない。2009年には「輪の国びわ湖推進協議会」が設立された。ミッションとして1)普及啓発:自転車ファンを増やし正しい乗り方を広める。2)社会提案:自転車を活かす暮らし方・まちづくりを提案する。3)調査研究:自転車の使いやすい環境やツール等について研究する。4)ネットワーク活動:交通に関連する団体や個人と関係を深める。を掲げ、様々な事業に取り組んでいる。例えば「びわ湖一周認定証」である。同認定証は湖岸沿いの施設に設置されたチェックポイントを4箇所以上チェックし、申請するとヨシ紙でできた特製「びわ湖一周サイクリング認定証」と毎年色違いの「びわ湖一周サイクリング認定ステッカー」がもらえる。裏にはチェックした時分秒が記載される。2015年9月にはJR米原駅(滋賀県米原市)を自転車での「ビワイチ」の拠点にしようと、同県などでつくる「鉄道を活(い)かした湖北地域振興協議会」が、同駅でサイクリング用の自転車を貸し出す社会実験をおこなった。2016年3月にはびわ湖一周ロングライドが開催される。 

 これらの3つのサイクリングの地域資本について筆者が調査した結果が表〇である。

 しまなみ海道サイクリングにおける地域資本については、まず人的資本では、飲食店やサイクルオアシスの店員(ホスピタリティ)、地元民(ホスピタリティ)、他のサイクリスト、自転車店店員があった。物的資本では、通行手段としての橋、車道・歩道・自転車道、サイクルオアシス(トイレ、ラック、ベンチ、空気入れ、工具、給水)、ホテル・民宿、飲食店、コンビニ、レンタサイクル、タクシー(自転車搬送用など)、船、道路標識、ブルーライン、無料マップ、自転車店(ジャイアント今治、尾道)があった。自然資本では、景観(海、山、空、島)、潮風(香り、肌感覚)、波(音)、温暖な気温(温暖な時期、瀬戸内気候)がった。文化資本では、島の民家、柑橘栽培の景色、造船の景色、橋(景観)、サイクルオアシス(地元物産、名物)がった。

 飛騨古川里山サイクリングにおける地域資本について、まず人的資本では、ガイド、地元民(ホスピタリティ)、他のツアー客、物産店店員(ホスピタリティ)があった。物的資本では、自転車(クロスバイク)、車道・歩道、物産店、水路(水の流れ、鯉)があった。自然資本では、空気(美味しさ)、川・小川(景色、音)、山並みの景色、森(景色、香り)、小鳥(鳴き声、見た目)があった。文化資本では、合掌造りの古民家、干し柿、湧き水場、神社(鳥居)、水田の景色、牛舎、城下町の街並み、物産店の物産、焚火(香り、見た目)、飛騨古川駅の駅舎、寺(本光寺)があった。

 ビワイチサイクリングにおける地域資本について、まず人的資本では、ユースホステルスタッフ(ホスピタリティ)、サイクルサポートステーションスタッフ(ホスピタリティ)、道の駅の店員、他のサイクリスト、自転車店店員があった。物的資本では、道の駅、車道・歩道・自転車道、サイクルステーション(トイレ、ラック、ベンチ、空気入れ、工具、給水)、ホテル・民宿、レンタサイクル、サイクルトレイン、ショートカットクルーズ(船)、ビワイチレスキュー(タクシー)、飲食店・コンビニ、道路標識、無料マップ、自転車店(ジャイアント守山など)があった。自然資本では、琵琶湖の景色、湖岸、比良山系の景色、島々の景色(湖北)があった。文化資本では、メタセコイア並木、地元の名物(鮒ずし)、寺社仏閣(白髭神社など)、歴史遺産(彦根城など)、道の駅(地元物産、名物)があった。

表1.サイクリングにおける地域資本
出所:筆者作成

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