本節では、しまなみ海道サイクリング、飛騨古川里山サイクリング、ビワイチサイクリングの経験価値について概説する。
表1は、筆者が調査した3つのサイクリングの経験価値である。
まず、しまなみ海道サイクリングにおける経験価値は、SENSE(感覚的経験価値) について、視覚では海の景色、聴覚では海・風の音、触覚では海風が肌に触れる、味覚では塩レモン、塩ソフト、柑橘、魚介の食事、嗅覚では海の香りなどがあった。FEEL(情緒的経験価値)について、大自然の中(ビル、電車などない)という非日常空間にいるという開放感、海の上・海岸線を走るという非日常性、日本の海の田舎の自然・営みに触れ合うことでの日本の価値の再認識があった。THINK(創造的・認知的経験価値)について、出発地の今治市(愛媛県)、尾道市(広島県)、島々、しまなみ海道の歴史、文化、食、気候など。海岸を走るコツなどを知ることがあった。ACT(肉体的経験価値とライフスタイル全般)について、ロングライドに対する魅力の発見、自然の中を走る魅力、民宿に泊まりながらサイクリングを楽しむという楽しみの発見、輪行の楽しみ、週末の楽しみの発見、ロングライドの達成感があった。RELATE(準拠集団や文化との関連づけ) について、サイクリング仲間とのツアー、サイクリストとの現地での交流、SNSでの交流があった。
続いて飛騨古川里山サイクリングにおける経験価値は、SENSE(感覚的経験価値) について、視覚では日本古来の里山の景色(山、田んぼ、小川、古民家、山と空のコントラストなど)、森(木々)の香り、牛、干し柿、城下町の町並み、鯉が泳ぐ水路、店舗が、聴覚では川の流れる音、小鳥のなく声が、触覚では風が肌に触れる感覚が、味覚では飲む水・コーヒー、お土産売り場で買う現地の特産物・名物が、嗅覚では木々の香り、焚き火の香りが感じられた。FEEL(情緒的経験価値)について、自然の美しさ、空気・水の綺麗さ、都市を離れて自然の中にいるという開放感、自転車という自分のペースで楽に移動できるという自由感、日本の古来の風景に出会えるノスタルジー感などが感じられた。THINK(創造的・認知的経験価値)について、里山での暮らしに接することで気づく地元の人の自然と共存する知恵、飛騨古川の歴史、文化、食、気候などがあった。ACT(肉体的経験価値とライフスタイル全般)について、4時間のスローロングライドによる爽快感、適度な疲労感、リラックスした運動、気軽に停れることの安心感、自然の中(田舎)を走る楽しみ、休日に都市を離れ地方を訪れるという楽しみなどがあった。RELATE(準拠集団や文化との関連づけ) について、里山サイクリンググループでの一体感、SNSでの交流、地元の人との交流による自然が好きなもの同志の一体感があった。
最後に、ビワイチサイクリングにおける経験価値については、SENSE(感覚的経験価値) について、視覚では湖岸の景色、湖岸際の山、空とのコントラスト、琵琶湖大橋とのコントラスト、自転車目線の景色、南と北で変わる琵琶湖の風景、島、湖北の水の綺麗さ、魚、鳥があった。聴覚では湖の波の音、風切る音、湖からの風があった。味覚では湖料理、地元の名物(鮒寿司)、道の駅での試食があった。FEEL(情緒的経験価値)について、日本一の琵琶湖(200km)を一周しているという優越感、長い距離を信号にあまり捕まることがなく走れるという爽快感、湖の湖岸を走るという特別感、ゴールした時の達成感があった。THINK(創造的・認知的経験価値)について、琵琶湖の自然、歴史、湖岸の人々の営み・文化、気候、湖(琵琶湖)の周りを走るコツを知ることなどがあった。ACT(肉体的経験価値とライフスタイル全般)について、200kmというロングライド、湖の周りを走ること、高低差のない道を走れること、1泊2日で走るというサイクルツーリズムの魅力などを感じた。RELATE(準拠集団や文化との関連づけ) について、サイクリング仲間とのツアー、サイクリストとの現地での交流、SNSでの交流、琵琶湖を愛する地元の人との交流、宿泊先のユースホステルでの宿泊者との交流などがあった。
表1.サイクルツーリズムにおける経験価値
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