溝尾ら(2009)は、観光事業には、旅行者、観光対象となる観光資源、旅行者に利便性を提供する観光関連企業の3分野がある、と述べている。さらに旅行が増大するにつれ、観光対象となる資源の保護や旅行者に快適な旅行を保証する行政の役割が加わる。近年、地域住民の役割が増大して、地域住民を加えることもあるが、それは広く観光対象(地域)に含める。
観光行動は、基本的には観光主体としての観光客と観光客体としての観光資源、さらに観光資源が集積した観光地との関係で成立する。観光者は目的の観光対象に接するために居住地を離れて旅行し、観光対象である観光資源に接して感激し、満足し、再び居住地に戻ってくる。感動、満足が得られる旅行、これは観光の意義の一つであろう。
観光事業には観光者の旅行をより快適にするために、旅行途中や観光対象地において、飲食や物品販売、宿泊などに対応するサービスが必要とされ、これらサービスを提供する観光関連産業の「観光施設」がある。このサービスのための施設(観光施設Ⅰと呼ぶ)を超えて、宿泊や日常生活の行動である買物、飲食が目的となる旅行もあり、しばしばこれらの施設が観光対象(観光施設Ⅱと呼ぶ)にもなる。このように旅行者の観光目的となる観光客体には、観光資源と一部の観光施設がある(図1)。
図1.観光資源、観光対象、観光施設、観光事業の関係
出典:溝尾 良隆[2009]『観光学全集〈第1巻〉観光学の基礎 (観光学全集 第 1巻)』原書房,p44より筆者作成
観光地の魅力は、様々な要素から成り立つ。その一つに、「観光対象」を挙げることができる。竹内ら(2018)は前田ら(2015)をもとに表5-1のように整理した。観光資源は、自然観光資源、人文観光資源および複合型観光資源に大別される。自然観光資源の要素は、季節や気候、景観など多様である。人文観光資源は、人間によって生み出された有形・無形の資源である。無形資源のうち、催し物はイベントのことであり、博覧会やオリンピックなども含まれる。複合型観光資源は、自然および人文の複合である。例えば有名な社寺もそれ単体でなく、周辺環境や文化的背景があることで資源となる。特に、最近では複合型観光資源が注目されている。観光施設(サービスを含む)は、宿泊施設や観光難内施設のように、観光客のための施設でもあるが、観光以外のために設けられる施設もある。たとえば、博物館や民俗資料館は、その地域の歴史に関する資料を収集、保存することが目的であり、それらが公開されている施設である。また、レクリエーション施設にはテーマパークも含まれる。
表1 観光対象の分類
出典:竹内正人他[2012]『入門 観光学』,ミネルヴァ書房,p34より筆者作成
次に、観光資源の分類について、溝尾ら(2001)は観光対象となる資源・施設を表2の通り分類した。まず、人間の力では創造し得ない自然観光資源がある。自然資源は、一度破壊をしたら回復か不可能な代替性の少ない資源であるが、湖沼、滝、自然現象など枯渇性資源としての危険性も秘めている。また、人間が創造した資源を人文資源とした。
出典:溝尾 良隆[2009]『観光学全集〈第1巻〉観光学の基礎 (観光学全集 第 1巻)』原書房,p50より筆者作成
0 件のコメント:
コメントを投稿