経験価値が注目される背景として、Bernd H. Schmitt(2000)は伝統的マーケティングと比較しながら、以下の4つの特性を述べ指摘している。
まず、伝統的マーケティングは、主に機能的特性(Feature)と便益(Benefit)にフォーカスしている。伝統的マーケティングが仮定しているのは、さまざまな市場(産業用品、消費者用品、技術、サービス)の顧客(ビジネス顧客や最終消費者)が、自分たちにとっての重要性に従って機能的特性をウエイトづけし、製品特性の存在を評価し、全体的に最高の効用(ウエイトづけした特性の総和と定義される)をもつ製品を選択することになっている。このフレームワークに適さないものすべては、それがどんな意味なのか概念的理解のないままに、せいぜい「イメージ」効果とか「ブランド」効果と名付けられることになる。あるいは、最悪の場合、「不適切」で「意味のない」誤差、と考えられてしまっている。
次に、伝統的マーケティングでは、マクドナルドの競合をバーガーキングやウェンディーズなど同じハンバーガー業界と考える。ビザハットやフレンドリーズやスターバックスなど他のファストフードやカフェを競合と考えない。伝統的マーケターにとって、競争は主に狭義の製品カテゴリー内で起こるものと考える。
次に、伝統的マーケティングでは、顧客を理性的な意思決定者であると考える。例えば意思決定のプロセスとしてニーズの探知、情報探索、代替案の評価、購買と消費といった流れをたどると考える。だが、実際に人はこのようなプロセスでモノやサービスを購入するだろうか?
最後に、伝統的マーケティングは分析的、計量的、言語的である。例えば回帰モデルやポジショニング・マップ、コンジョイント分析などが頻繁に利用される。これらの方法や有益な洞察を与えてくれる状況も存在する。だがそれぞれの手法には限界がある。企業内で調査の目的と機能を考えることが重要なのである。
引用参考文献
バーンド・H・シュミット[2000]『経験価値マーケティング』ダイヤモンド社
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